骨盤の男女の違い 実物大模型で比べる形・角度・広さ

人間の体の不思議

第14回 骨盤の男女の違い 実物大模型で比べる、形・角度・広さ

「男の人と女の人って、骨も違うの?」

お子さんにこう聞かれたら、どう答えるでしょうか。

身長や筋肉のつき方は違っても、骨の形そのものは男女で同じ、と思われるかもしれません。実際、腕や足の骨を一本だけ見て、男性のものか女性のものかを言い当てるのは簡単ではありません。

ところが、骨盤だけは別です。骨盤は、全身の骨格の中で男女の違いがもっともはっきり表れる部分と言われています。形・広さ・角度のどれを見ても、男性と女性で特徴が分かれます。

今回は、男性と女性の骨盤を実物大で再現した模型を並べて、「どこが、どう違うのか」「なぜ違うのか」を順番にご説明させて頂きます。

男性と女性の骨盤模型を前から並べた比較写真 手前が女性、奥が男性

男性と女性の骨盤模型を前から並べたところ。手前が女性、奥が男性です。

上の写真は、男性と女性の骨盤模型を前から並べたものです。手前が女性、奥が男性です。奥の男性の骨盤は、カメラから離れているぶん小さく写っていますので、大きさではなく「形」に注目してご覧ください。

いちばん下の、左右の骨が合わさる部分を見比べてみてください。手前の女性の骨盤では、その下のすき間がゆったりとしたアーチになっているのに対して、奥の男性の骨盤では、すき間が細い逆V字になっています。これが、あとでご説明する「恥骨下角」の違いです。

骨盤は4つの骨でできている

男女の違いを見る前に、骨盤がどんな骨でできているのかを確認しておきましょう。

骨盤は、体の真ん中で上半身と下半身をつなぐ、輪のような形の骨格です。次の4つの骨が組み合わさってできています。

左右の寛骨は、もともと腸骨(ちょうこつ)・坐骨(ざこつ)・恥骨(ちこつ)という3つの骨でした。子どものうちは軟骨でつながっていて、成長とともに1つの骨に合わさります。腰に手を当てたときに触れる出っ張りが腸骨、椅子に座ったときにお尻の下で体重を受け止めているのが坐骨、下腹部のいちばん下にあるのが恥骨です。

仙骨は、5つの仙椎(せんつい)が合わさってできた骨で、背骨のいちばん下の部分でもあります。尾骨は、3〜5個(多くは4個)の小さな骨からなり、多くは合わさって一つになっています。

骨どうしの主なつなぎ目は3か所あります(このほか、仙骨と尾骨の間にも小さなつなぎ目があります)。後ろ側で仙骨と左右の寛骨がつながる「仙腸関節(せんちょうかんせつ)」が2つ、前側で左右の恥骨が向かい合う「恥骨結合(ちこつけつごう)」が1つです。恥骨結合は、骨と骨の間に軟骨の板がはさまった、ほとんど動かないつなぎ目です。

骨盤には、大きく2つの役目があります。ひとつは、上半身の重さを受け止めて、股関節から両足へと伝えること。もうひとつは、膀胱や腸、女性では子宮や卵巣といった下腹部の臓器を、横と後ろから囲んで守ることです(臓器を下から直接支えているのは、骨盤の底に張られた筋肉です)。

女性の骨盤は横に広く、男性の骨盤は縦に高い

女性の骨盤模型を前上方から見た写真 横に広く、骨盤の入口が丸い

女性の骨盤を前の上のほうから見たところ。

上の写真は、女性の骨盤を前の上のほうから見たものです。

左右に大きく張り出した板のような部分が、腸骨の上の部分(腸骨翼)です。女性の骨盤では、この腸骨翼が横に向かって広く開いていて、全体として横に広く、背の低い形をしています。

男性の骨盤模型を前上方から見た写真 腸骨が立ち上がり、骨盤の入口がハート型

男性の骨盤を前の上のほうから見たところ。

こちらは男性の骨盤です。

女性と比べると、腸骨翼が横に寝ずに、上に向かって立ち上がっているのが分かります。全体として幅が狭く、背の高い形です。骨そのものも太く、筋肉がつく部分の凹凸がはっきりしている傾向があります。

ちなみに当センターの模型でも、男性の骨盤は0.74キロ、女性の骨盤は0.6キロと、男性のほうが重く作られています(模型の重さで、実際の骨の重さではありません)。

骨盤の入口の形 ハート型と円形

写真2と写真3を、もう一度見比べてみてください。今度は、骨盤の真ん中にぽっかりと開いた穴に注目します。

この穴の縁は「骨盤の入口(骨盤上口)」と呼ばれ、ここから下が、骨で囲まれた筒状の空間(小骨盤)になっています。

女性の骨盤では、入口は横長の円に近い形をしています。

男性の骨盤では、後ろ側の真ん中から仙骨の上の端(岬角・こうかく)が前に張り出しているため、入口がくぼんだハート型に見えます。写真3で、上の中央からせり出している部分が岬角です。

入口から下の筒の形も違います。女性の骨盤は、浅く広い筒のような形です。男性の骨盤は、深く、下に行くほど狭くなる漏斗(じょうご)のような形をしています。

恥骨下角 男性は鋭く、女性は広い

骨盤を前から見たとき、左右の恥骨が合わさる恥骨結合の下には、逆V字形のすき間ができます。このすき間の角度を「恥骨下角(ちこつかかく)」と言います。

恥骨下角は、男女の違いがとくに分かりやすい部分です。

角度の数値は、文献や測り方によって幅があり、男女で範囲が重なることもあります。当センターの骨盤模型の商品ページでは、男性約70度、女性約90度とご紹介しています。

写真1の下側で、手前の女性の骨盤のアーチが広く、奥の男性の骨盤の逆V字が細く見えたのは、この違いによるものです。

このほかにも、男女で違いの出る部分があります。

なぜ違う? 骨盤は赤ちゃんが通る道

では、なぜ骨盤だけに、これほどはっきりした男女の違いがあるのでしょうか。

いちばん大きな理由は、出産です。

お母さんのおなかの中で育った赤ちゃんは、生まれてくるとき、骨盤の真ん中にあいた穴をくぐり抜けてきます。つまり女性の骨盤は、赤ちゃんの通り道(産道)の骨組みでもあるのです。

入口が丸く広いこと、筒が浅く広いこと、恥骨下角や坐骨の間が広く出口が大きいこと、仙骨の反りがゆるやかなこと。ここまでご紹介した女性の骨盤の特徴は、どれも赤ちゃんの頭が通るための空間を広く取る方向にそろっています。

一方、男性の骨盤は、女性に比べて狭く、厚く、頑丈な作りになっています。

生まれてくるときの赤ちゃんの頭のしくみについては、「第13回 頭蓋骨は何個の骨でできている?」で、お母さんのおなかの中で赤ちゃんが育つ様子は「第9回 子宮と赤ちゃんの育ち方」でご紹介しています。

なお、ここでご紹介した違いは、あくまで「その傾向がある」というものです。骨盤の形には個人差が大きく、男性的な特徴をもつ女性の骨盤や、その逆もめずらしくありません。一つの特徴だけで男女が決まるわけではなく、いくつもの特徴を合わせて判断されます。

骨盤の男女の違いは、子どもの骨盤ではまだはっきりせず、思春期を過ぎるころから表れてきます。

骨盤の内側をのぞいてみる

骨盤模型の内側を斜めからのぞいた写真 仙骨に並ぶ仙骨孔が見える

骨盤の内側を斜めからのぞき込んだところ。

上の写真は、骨盤の内側を斜めからのぞき込んだところです。

奥に見える板状の骨が仙骨で、縦に並んだ穴が開いているのが分かります。これを「仙骨孔(せんこつこう)」と言います。仙骨の中には、背骨の中を通ってきた神経の通り道(仙骨管)が続いていて、そこから出た神経が、この穴を通って骨盤の内側や脚のほうへ向かいます。

模型では、恥骨結合の部分がやわらかいゴムで再現されています。骨どうしが軟骨の板でつながっている様子を、実際に手に取ってイメージして頂けます。

第14回で用いた人体模型は

今回の写真は、全て「実物大 骨盤模型(男性・女性)」を使っています。

男性の骨盤と女性の骨盤を、それぞれ実物大で再現したモデルです。上から見た大きさは縦(奥行き)20センチ、横25センチほどで、仙骨・尾骨・寛骨の3種類の骨の形と、そのつながり方が再現されています。男性・女性それぞれ単体でもお求め頂けますので、2体を並べて比べることもできます。

腰の骨とのつながりまでご覧になりたい場合は「腰椎・脊髄・大腿骨付き骨盤模型」、産道のご説明には「産道説明用 女性骨盤模型」もございます。

動画で見る 女性の骨盤と男性の骨盤

ここまでご説明した内容を、実際の人体模型の動画でご覧いただけます。
※動画は女性37秒・男性45秒です。再生の際は音が出ますのでご注意ください。

骨盤の形をご自身の目で確かめたい方、患者さんや学生さんへのご説明にお使いになりたい方は、こちらから模型をご覧いただけます。

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