心臓の本物の写真が見たい方へ|形・大きさ・色を実物大の心臓模型で解説

人間の体の不思議

第7回 本物の心臓はどんな形?・・・実物大の心臓模型で見るリアルな姿

「心臓の絵を描いてみて」とお願いすると、子供さんはほぼ全員、あの左右対称のハートマークを描かれます。大人の方でもそうです。

しかし、本物の心臓は、あの形をしていません。

実際の心臓は、先の少しとがった円錐形で、色は暗い赤色、表面には黄色い脂肪が筋のように走っています。大きさはご自身の握りこぶし1つ分ほどです。

第1回では、心臓の「仕組み」——4つの部屋と弁、血液が全身をめぐる道すじについてお話させて頂きました。

今回の第7回では角度を変えて、「本物の心臓は、どんな形で、どのくらいの大きさで、体のどこに、どちらを向いて入っているのか」という、見た目そのものについてお話させて頂きます。

あわせて、第1回で問いを立てたまま詳しくご説明できていなかった「心臓の筋肉は普通の筋肉とどう違うのか」「心臓の血管はどういう役割なのか」の2点も、ここで取り上げさせて頂きます。

なお、写真は当センターの心臓模型を使ってご説明させて頂きます。模型は構造が整理され、色分けもされているため、「どこが何なのか」が一目で分かります。授業や院内でのご説明の場面でも、模型のほうが伝わりやすいことが多いかと思います。

ハートマークは、心臓の形ではない

下の写真は、実物大の心臓模型を正面から見たものです。

ご覧頂くと分かるかと思いますが、あの左右対称のハートマークとは、まるで違う形をしています。

本物の心臓の形をひとことで表すなら、「先の少しとがった、丸みのある円錐形」です。

上のほうが太く、下にいくにつれて細くなり、最後は丸い先端になっています。

この先端のことを「心尖(しんせん)」と呼びます。

そして上の太い部分——血管がたくさん出入りしている側を「心底(しんてい)」と呼びます。

実物大 心臓模型を正面から見たところ

ではなぜ、あのハートマークが心臓の形として広まったのでしょうか。

実は、はっきりした由来は分かっていません。古い書物に描かれた図案が受け継がれたものと言われていますが、いずれにせよ、あれは記号であって、解剖学的な形ではありません。

心臓の形を正しくイメージして頂くには、「握りこぶしを、少し斜めに傾けたところ」を思い浮かべて頂くのが一番近いかと思います。

大きさは握りこぶし1つ分、重さは300グラムほど

本物の心臓の大きさは、その人自身の握りこぶし1つ分とよく言われます。

具体的な数字を挙げますと、成人でおおよそ、長さ(心底から心尖まで)が12〜14センチ、幅が9〜10センチ、厚みが6センチほどです。

重さは、成人男性でおよそ300〜350グラム、成人女性でおよそ250〜300グラム。

ただしこれらは目安で、体格や測定のしかたによって幅があります。文献によって示される数値も少しずつ違います。

牛乳パック1本が1キログラムですから、重さはその3分の1ほどということになります。

「思ったより小さい」と感じられる方が多いのではないでしょうか。

胸の中でこれだけ強く鼓動を感じるものですから、もっと大きいものを想像されているのだと思います。

このサイズ感は、写真や図では伝わりにくい部分です。

実物大の心臓模型をお使いのお客様からは、次のようなご意見を頂いています。

「成人病の指導の場で、心臓の血管の病気や、高血圧による心肥大について説明する際に使用しています。実物を手にとって説明することで、分かりやすく病気のことを説明できます。」(保健所)

心臓は「胸の左側」にはない

「心臓はどこにありますか」とお聞きすると、多くの方が左胸を指されます。

これは、半分正しくて、半分間違いです。

心臓の本体は、胸のほぼ真ん中、左右の肺にはさまれた空間にあります。胸骨(胸の中央にある平たい骨)の、ちょうど裏側です。

ただし全体としてはやや左に寄っており、体の真ん中の線より左側に約3分の2、右側に約3分の1が入っています。

では、なぜ左胸で拍動を感じるのでしょうか。

それは、心臓がまっすぐ縦に入っているのではなく、斜めに傾いているからです。

下の写真は、同じ実物大模型を斜め後ろから見たものです。太い血管が集まっている側(心底)は、後ろ側の上を向いています。

そして先端の心尖は、左前の下を向いています。

つまり心臓は、右上から左下に向かって斜めに寝かせたような姿勢で、胸の中に収まっているのです。

実物大 心臓模型を斜め後ろから見たところ

拍動のたびに、この心尖が胸の壁に近づきます。その動きが体表に伝わって感じられる場所が、第5肋間・左鎖骨中線上、またはそのやや内側と呼ばれる位置です。

このあたりに手を当てるとトントンと感じるので、「心臓は左胸にある」と思われるわけですね。

模型を手に取って頂くときは、この向きを意識して頂くと理解が深まります。心尖を左前下に向けて構えると、模型が実際の体内での姿勢を再現した状態になります。

胸に当てて見せながらご説明されると、患者さんやお子さんにも一目で伝わるかと思います。

本物の心臓は、真っ赤ではない

模型の写真をご覧になると、赤と青がはっきり使い分けられていることに気づかれるかと思います。

これは、酸素を多く含む血液が通る場所を赤、酸素の少ない血液が通る場所を青として、流れを分かりやすく示すための約束事です。

心臓に出入りする太い血管(大動脈・肺動脈・大静脈・肺静脈)と、心臓の表面を走る冠動脈(赤)・冠静脈(青)が、この決まりで塗り分けられています。血管そのものの色ではありません。

では、心臓の本体は何色なのでしょうか。

生きた状態では、赤褐色から暗い赤色をしています。真っ赤ではなく、レバーに近い、少し黒みがかった赤とお考え頂くと近いかと思います。

ただし色の見え方は、そのときの血液の量や照明によっても変わります。標本として保存されたものは、また違った色に見えます。

そして表面には、黄色みがかった脂肪が付いています。とくに血管の走っている溝に沿って、脂肪が帯のようにたまります。

模型でも、血管に沿って走る黄色い部分が、この脂肪にあたります。

この点は、模型をお使いになる際に一言添えて頂くと、誤解を防げます。

「本物はこんなにはっきり色が分かれていないけれど、どこに何が通っているかを分かりやすくするために、色を付けてある」

とご説明頂くと、聞かれた方の理解が正確になります。

心臓の表面を走る血管・・・「冠動脈」

下の写真で、心臓の表面を木の枝のように這っている細い血管が見えるかと思います。

赤い線が冠動脈(かんどうみゃく)、青い線が冠静脈(かんじょうみゃく)です。

意外に思われるかもしれませんが、心臓は、自分の中を流れている大量の血液からは、酸素をほとんど受け取っていません。

心臓の壁は厚く、内側の血液から染み込ませるだけでは、まったく足りないのです。

そこで心臓は、自分自身を養うための専用の血管を、外側に持っています。

実物大 心臓模型の表面を走る冠動脈と冠静脈

冠動脈は、心臓から出てすぐの大動脈の根元(大動脈洞)から、右と左に1本ずつ起こります。

左の冠動脈は、そこからさらに前を下る枝と、左側に回り込む枝に分かれます。右の冠動脈は、右側から裏側へ回り込みます。

心臓の表面をぐるりと取り囲むように走るこの形が、王冠(かんむり)をかぶせたように見えることから、「冠」の字が使われています。

模型では、この枝分かれが立体的に再現されています。平面の図では枝の前後関係が分かりにくいのですが、模型ですと裏側に回り込む枝まで指で追うことができます。

第1回で「心臓の血管はそれぞれどういう役割を果たしているのか」という問いを立てましたが、その答えがこの冠動脈です。心臓の中を通る血液は全身に配るためのもので、心臓自身が使う分は、外側のこの血管が運んでいます。

左と右で、壁の厚さがまるで違う

下の写真は、模型を2つに開いたところです。

中を見て頂くと、多くの方が驚かれることがあります。左心室と右心室で、壁の厚さがまったく違うのです。

左心室の壁は、厚いところで1センチから1.5センチほど。一方の右心室の壁は、3ミリから5ミリほどしかありません。厚さにしておよそ3倍の差があります。

実物大 心臓模型を2つに開いたところ

実物大 心臓模型の内部。心室の壁の厚さと弁が見える

理由は、送り出す先が違うためです。右心室が血液を送るのは肺だけで、肺の血管は抵抗が小さく、低い圧力で足ります。これに対して左心室は、全身へ高い圧力で送り出す必要があります。そのぶん筋肉が厚く発達しているのです。

(4つの部屋それぞれの働きと、血液が流れる順番については、第1回で詳しくご説明しております。)

図で「左心室のほうが厚い」と読むのと、指で厚みの差をなぞるのとでは、記憶への残り方がまったく違います。

分解できる模型が研修や授業で選ばれるのは、この「触って確かめられる」という点が大きいようです。

心臓が動き続けられる理由・・・「心膜」と「心筋」

最後に、心臓が休まず動き続けるための2つの仕組みについて触れさせて頂きます。1つは心臓を包む膜、もう1つは心臓を作っている筋肉です。

まず、本物の心臓は、胸の中にむき出しで置かれているわけではありません。「心膜(しんまく)」という膜に、すっぽりと包まれています。

心膜は、外側の丈夫な線維性心膜と、その内側の漿膜性心膜からなります。漿膜性心膜はさらに、外側の壁側板と、心臓の表面に直接張り付いた臓側板の2枚に分かれています。

そしてこの2枚の間には、ごくわずかな液体が入っています。量にしておよそ15〜50ミリリットル、大さじ1〜3杯ほどです。

この液体には、潤滑油の役割があります。

心臓は1日に約10万回、伸び縮みを繰り返しています。そのたびに周りの組織とこすれていては、たまりません。

膜と膜の間に液体があることで、心臓は摩擦を抑えながら滑らかに動き続けることができます。

また心膜は、心臓が動きすぎて位置がずれないよう、周囲につなぎとめる役割も持っています。

もう1つが、心臓を作っている筋肉——「心筋(しんきん)」です。

腕や足の筋肉は、自分の意思で動かせますが、しばらく使うと疲れて動かなくなります。一方の心筋は、生まれてから死ぬまで、長い休みを取ることなく動き続けます。

1日に約10万回、1年で約3,600万回。80年生きたとすると、生涯で約30億回という計算になります。

心筋がこれだけ働き続けられる理由は、主に3つあります。

1つめは、酸素と栄養が絶えず届いていることです。先ほどの冠動脈が、心筋に休みなく血液を送り続けています。

2つめは、エネルギーを作る工場をたくさん持っていることです。細胞の中でエネルギーを生み出す「ミトコンドリア」が心筋の細胞には非常に多く、体積にしておよそ3分の1を占めると言われています。酸素を使ってエネルギーを作り続けるため、疲労物質がたまりにくくなっています。

3つめは、1回縮むごとに、必ずゆるむ時間があることです。心臓は縮みっぱなしではなく、収縮と拡張を交互に繰り返しています。この拡張の時間が、心筋にとっての休息にあたります。

なお、心筋にはもう1つ、腕や足の筋肉と違う特徴があります。

心筋の細胞は、隣どうしが「介在板」という構造でしっかり連結されています。そのため電気の合図が細胞から細胞へ素早く伝わり、まず左右の心房が、続いて左右の心室が、そろって縮むことができます。

腕の筋肉のように「一部だけ力を入れる」ということができない代わりに、部屋ごとにまとまって、確実にポンプとして働けるわけですね。

これが、第1回で問いを立てた「心臓の筋肉は普通の筋肉とどう違うのか」への答えになります。

そして心筋は、自分の意思では動かせません。

「心臓を止めよう」と念じても止まりませんし、「今から速く動かそう」と思っても速くはなりません。

運動をしたときや、緊張したときに鼓動が速くなるのは、意識してそうしているのではなく、体が自動的に調節している結果です。

意識とは無関係に動き続けるという点も、腕や足の筋肉との大きな違いです。

写真や模型を見るときは、この順番で

ここまでのお話をふまえて、心臓の写真や模型をご覧になるときの見方を、順番にまとめておきます。

授業や院内でのご説明の際に、この順で進めて頂くと伝わりやすいかと思います。

外から見た姿が頭に入っていると、中の構造の話がずっと入りやすくなります。

いきなり断面図から入ると、外側のイメージができていないぶん、位置関係がつかみにくくなります。

模型をお使いになる場合も、まず閉じたまま外観を見せ、それから開く、という順番をおすすめします。

※本連載は、教材・展示のための解説です。症状や治療に関することは、必ず医療機関にご相談ください。

第7回 本物の心臓はどんな形?で用いた人体模型は・・・

動画で見る 心臓の形と構造

ここまでご説明した心臓の形と構造を、実際の人体模型の動画でご覧いただけます。
※1本目は52秒、2本目は2分42秒です。再生の際は音が出ますのでご注意ください。

実物大 心臓模型で見る、心臓の構造(52秒)

※本記事の写真と同じ「実物大 心臓模型」の動画です。第1回でもご覧いただいています。

セミナー・講演用 心臓3倍 拡大モデル(2分42秒)

※こちらは「セミナー・講演用 心臓3倍 拡大モデル」の動画で、上の実物大 心臓模型とは別の商品です。大きさが3倍ありますのでご注意ください。

構造をご自身の目で確かめたい方、患者さんやご家族・学生さんへのご説明にお使いになりたい方は、こちらから模型をご覧いただけます。

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