第13回 頭蓋骨は何個の骨でできている? 色分け模型で見る、23個の骨と縫合のしくみ
「頭の骨は、全部でいくつあると思う?」
お子さんにこう聞かれたら、すぐに答えられるでしょうか。
頭蓋骨(ずがいこつ)というと、つるりとした一つの大きな骨を思い浮かべるかもしれません。ドクロのマークも、一つの塊のように描かれています。
ところが実際の頭蓋骨は、たくさんの骨が組み合わさってできています。しかもそれぞれの骨は、ギザギザした境目でがっちりと噛み合っていて、簡単には外れません。
今回は、骨ごとに色を塗り分けた頭蓋骨模型を使って、「頭蓋骨は何個の骨でできているのか」「その骨はどうつながっているのか」を順番にご説明させて頂きます。

上の写真が、今回使う色分けの頭蓋骨模型です。実物大で、頭の最大周囲は51センチ(骨そのものの寸法です)。ひとつひとつの骨が違う色で塗られているので、どこからどこまでが一つの骨なのかが、ひと目で分かります。
おでこの水色と、その後ろの緑色の境目に、ギザギザした線が走っているのが見えるでしょうか。これがあとでご説明する「縫合」です。あごの部分が白いままなのは、下顎骨だけが取り外せる別のパーツになっているためです。
答えは23個 脳を包む8個と、顔を作る15個
頭蓋骨を構成する骨は、全部で23個です。
大きく2つのグループに分かれます。脳を入れる箱を作っている「脳頭蓋(のうとうがい)」と、顔の形を作っている「顔面頭蓋(がんめんとうがい)」です。
脳頭蓋は、次の6種類・8個です。
- 前頭骨(ぜんとうこつ)1個:おでこを作る骨
- 頭頂骨(とうちょうこつ)2個:頭のてっぺんを作る、左右一対の骨
- 後頭骨(こうとうこつ)1個:後頭部を作り、背骨とつながる骨
- 側頭骨(そくとうこつ)2個:耳のあたりを作る、左右一対の骨
- 蝶形骨(ちょうけいこつ)1個:頭蓋骨の底の中央にある、蝶が羽を広げたような形の骨
- 篩骨(しこつ)1個:鼻の天井と、目のくぼみの内側の壁を作る、軽くて薄い骨
顔面頭蓋は、次の9種類・15個です。
- 上顎骨(じょうがくこつ)2個:上あごと、鼻の両脇を作る骨
- 下顎骨(かがくこつ)1個:下あごの骨
- 頬骨(きょうこつ)2個:ほおの出っ張りを作る骨
- 鼻骨(びこつ)2個:鼻すじのつけ根側を作る小さな骨。鼻の先のほうは軟骨です
- 涙骨(るいこつ)2個:目頭のくぼみを作る、爪ほどの大きさの骨
- 口蓋骨(こうがいこつ)2個:口の天井の奥を作る骨
- 下鼻甲介(かびこうかい)2個:鼻の中に張り出している、ひだ状の骨
- 鋤骨(じょこつ)1個:鼻を左右に仕切る壁(鼻中隔)の、奥の下側を作る骨
- 舌骨(ぜっこつ)1個:のどの上部にある、U字型の骨
8個と15個で、合わせて23個です。
なお、数え方には少し幅があります。この記事では、日本の解剖学の教科書でよく使われる「15種23個」という数え方にそろえました。舌骨はほかの骨と直接つながっていないため、頭蓋骨に含めずに22個と数えることもあり、耳の奥にある耳小骨(じしょうこつ)6個を加えて28個・29個とする数え方もあります。また、篩骨を脳頭蓋ではなく顔面頭蓋に入れる流儀もあります。
耳小骨については、「第12回 耳の中はどうなっている?」で詳しくご紹介しています。
関節で動く骨は、下顎骨だけ
23個のうち、ほかの骨と関節をつくって自由に動かせるのは下顎骨だけです。
下顎骨は、耳のすぐ前にある顎関節(がくかんせつ)で側頭骨とつながっています。口を開け閉めしたり、食べ物をすりつぶしたりできるのは、この関節があるからです。
頭蓋を組み立てているほかの骨どうしは、あとでご説明する「縫合」でがっちりと結ばれていて、ほとんど動きません。脳という大切な臓器を守る箱ですから、動かないほうが都合がよいわけです。
ただし舌骨だけは例外です。ほかのどの骨とも関節や縫合をつくらず、筋肉と靭帯だけで宙づりになっています。ものを飲み込むときに、のどの奥で上下に動く骨です。
模型でも、下顎骨は別に成形されていて、開け閉めできるようになっています。頭蓋冠(頭のてっぺんのふた)も取り外せるので、あとでご紹介する内頭蓋底を直接のぞいて頂けます。
縫合 骨と骨の、ギザギザした境目
頭蓋骨の骨と骨のつなぎ目を「縫合(ほうごう)」と言います。
縫合の線は、まっすぐではありません。パズルのピースのように複雑に入り組んでいて、隣り合う骨ががっちりと噛み合っています。この形のおかげで、外から力がかかっても骨がずれにくくなっています。
頭のてっぺんから後頭部にかけて、代表的な縫合が3本あります。
- 冠状縫合(かんじょうほうごう):前頭骨と頭頂骨の境目。頭を左右に横切る線
- 矢状縫合(しじょうほうごう):左右の頭頂骨の境目。頭のてっぺんを前後に走る線
- ラムダ縫合:頭頂骨と後頭骨の境目。後頭部にあり、ギリシャ文字のλに似た形

上の写真は、色分けをしていない標準的な頭蓋骨模型を、上の後ろから見たものです。白い面をよく見ると、縫い目のようなギザギザした線が横切っています。これが冠状縫合で、ここから手前が前頭骨、奥が頭頂骨です。
色が付いていないと、このように線をたどらなければ骨の境目が分かりません。色分け模型では、はじめの写真のように色が変わるので、どこまでが一つの骨なのかがひと目で分かります。
赤ちゃんの頭には、骨と骨のすきまがある
生まれたばかりの赤ちゃんでは、頭蓋骨の縫合はまだ閉じていません。骨と骨の間にすきまが残っていて、これを「泉門(せんもん)」と言います。
すきまは何か所かありますが、代表的なのは2つです。頭のてっぺんのやや前寄りにある、ひし形の大きなすきまが「大泉門(だいせんもん)」、後頭部にある三角形の小さなすきまが「小泉門(しょうせんもん)」です。
すきまがあることには、2つの意味があります。
ひとつは、生まれてくるときです。産道を通るあいだ、頭蓋骨は少し重なり合って頭を細くすることができます。骨が固く結ばれていたら、これができません。
もうひとつは、生まれたあとの成長です。赤ちゃんの頭のまわりの長さ(頭囲)は、生まれたときの平均がおよそ33センチ、1歳では46センチほどになります。骨と骨の間にゆとりがあることで、脳の成長に合わせて頭が大きくなれます。
大泉門は、おおむね1歳から2歳ごろ(平均で生後18か月ごろ)までに閉じるとされています。閉じる時期には個人差があります。小泉門はそれより早く、生後2〜3か月ごろに閉じます。
大泉門は、皮膚の上から平らな、あるいはわずかにへこんだやわらかい部分として触れることができます。心臓の拍動に合わせてぺこぺこと動いて見えることがありますが、これは正常です。泣いているときに一時的にふくらむのも心配ありません。
一方、泣いていないのに強くふくらんでいるとき、あるいは大きくへこんでいるときは注意が必要です。発熱・嘔吐・けいれん・ぐったりしている・母乳やミルクの飲みが悪い・おしっこが減っているといった様子をともなう場合は、自己判断をせず、早めに小児科を受診してください。
眼窩 7つの骨が集まってできたくぼみ
目の入っているくぼみを「眼窩(がんか)」と言います。
一つの大きな骨がくぼんでいるように見えますが、実は7つの骨が集まってこのくぼみを作っています。前頭骨、蝶形骨、頬骨、上顎骨、口蓋骨、涙骨、篩骨の7つです。

上の写真は、模型の眼窩を写したものです。くぼみの内側で色が切り替わっているところが、骨と骨の境目です。目頭側の内側の壁は、紙のように薄い骨でできています。
眼球そのものの構造については、「第11回 目の中はどうなっている?」でご紹介しています。
頭蓋底 神経と血管が通る、穴だらけの床
頭蓋骨を下から見たり、上のふたを外して内側から見たりすると、脳をのせている「床」の部分が現れます。ここを「頭蓋底(とうがいてい)」と言います。
頭蓋底には、大小さまざまな穴が開いています。脳から出る神経や、脳に出入りする血管が、この穴を通って頭の外とやりとりをしているためです。

上の写真は、模型を斜め下から見たところです。奥のくすんだ赤紫色が後頭骨、オレンジ色が側頭骨、手前の黄色が上顎骨(口の天井)です。後頭骨には「大後頭孔(だいこうとうこう)」という大きな穴が開いていて、脳と脊髄がここでつながっています。その両脇の出っ張りが後頭顆(こうとうか)で、背骨のいちばん上の骨と関節を作り、頭を支えています。

上の写真は、頭蓋冠(頭のてっぺんのふた)を外して、内側から頭蓋底を見下ろしたものです。この1枚だけは、内側まで色を塗り分けた「頸椎付き 配色頭蓋骨模型」の写真で、色の割り当てはここまでの模型とは異なります。
平らではなく、手前から奥へ3段の階段のようになっているのが分かります。手前の浅い段が前頭蓋窩(ぜんとうがいか)、中央の段が中頭蓋窩、いちばん深い奥の段が後頭蓋窩です。脳はこの段差にはまり込むように収まっています。
段のあいだや底には、いくつもの穴が開いています。目を動かす神経や、顔の感覚を伝える神経は、こうした穴を通って前へ出ていきます。写真の中央に見える赤い部分は、脳へ向かう血管を再現したものです。
頭蓋底は、歯科・耳鼻科・脳外科のいずれの領域にもまたがる場所です。色分けされていると、どの骨がどこまで張り出しているのかを説明しやすくなります。
第13回で用いた人体模型は
今回の写真は、全て「頭蓋骨 色分け模型」を使っています。
頭蓋骨を構成する骨を、骨ごとに塗り分けた実物大のモデルです。この記事の写真では、水色が前頭骨、緑色が頭頂骨、オレンジ色が側頭骨、黄色が上顎骨、くすんだ赤紫色が後頭骨です。どの骨が何色かの一覧は、商品ページに掲載しています。
下顎骨は別に成形されていて開け閉めでき、頭蓋冠(頭のてっぺんのふた)も取り外せるので、内頭蓋底を直接のぞいて頂けます。
色分けのない標準的なモデルをお探しの場合は「頭蓋骨 実物大 精密模型」、骨の各部位に番号を振って解説したモデルは「頭蓋骨 詳細解説モデル」がございます。
動画で見る 色分け頭蓋骨模型
ここまでご説明した内容を、実際の人体模型の動画でご覧いただけます。
※動画は48秒です。再生の際は音が出ますのでご注意ください。
※動画では下顎骨を固定するスプリングが左右2箇所になっていますが、現在の仕様は中央1箇所です。
頭蓋骨の構造をご自身の目で確かめたい方、患者さんやご家族・学生さんへのご説明にお使いになりたい方は、こちらから模型をご覧いただけます。
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