肝臓の機能と役割

人間の体の不思議

第5回 1500gの巨大臓器・・・「肝臓」の役割

第4回では、たんぱく質を分解し、食べ物を分解する胃についてご紹介させて頂きました。
胃を出た食べ物は、十二指腸へと流れ、消化液と混じりあいます。

十二指腸には胆汁や膵液という消化酵素が流れ込み、消化がさらに進みます。
このうち、胆汁は肝臓から分泌されるのですが、脂肪分の吸収をサポートしたり、膵液の酵素を活性化するのに役立ちます。

この胆汁・・・実は肝臓から分泌されます。
そして、肝臓は胆汁を分泌するだけでなく、様々な働きをしています。

今回は、1500gの巨大臓器である肝臓についてご紹介させて頂きます。

肝臓は横隔膜のすぐ下あたりに存在する大きな臓器です。
重さは1200g~1500g前後で、体内で最大の臓器です。

肝臓の位置

左の写真のように、肝臓はお腹の右上の部分(右季肋部)にあります。
(こげ茶色の臓器が肝臓です。実際の肝臓もこんな色です。)

なお、肝臓の下にある白い臓器は、第4回でご紹介した胃です。



さて、肝臓は一体何をしているのでしょうか?

肝臓の働きは大きく分けて3つあります。

1つ目の働きは、「貯蔵」です。
お米やパンなどの炭水化物は、体に吸収されるとき、糖質として取り込まれます。
この糖質はエネルギーのもとなのですが、肝臓に「グリコーゲン」として蓄えられます。

2つ目の働きは、「胆汁の分泌」です。
胆汁は胆嚢で産生されると思っておられる方がおられますが、実は違います。
肝臓で産生された胆汁が、胆嚢で濃縮され、十二指腸に出てきます。
この様子は、次の写真が分かりやすいです。

総胆管の開口部

左の写真は、十二指腸の拡大写真です。
緑の部分は、総胆管という名前の管で、胆嚢や肝臓につながっています。
ここから胆汁が分泌され、消化をサポートします。



3つ目の働きは、「解毒」です。
毎日の生活の中で、体の中には様々な毒素が入ってきます。
植物や野菜、肉など・・・どんな食べ物にも多少の毒が入っています。
たとえば、農薬や添加物、抗生物質などです。

しかし、多少の毒が体に入っても、私達の体に異常をきたしません。
なぜなら、その毒が肝臓で解毒され、分解されてしまうからです。

このように、肝臓には3つの働きがあるのですが、肝臓には他の臓器にはない驚きの能力があります。

それは、「半分になっても、再生することが出来る」という点です。
生体肝移植という言葉をご存じの方も多いかと思いますが、肝臓を切り取って別の人に移植しても、再生し、元の大きさにもどります。
他の臓器であれば、切り取ったら元の状態に戻らないのですが、肝臓は再生します。

肝区域の写真

左が肝臓の区域を表す写真です。
肝臓は8個の区域に分かれており、病気の手術の際などは、この区域を目安に切除を行います。

肝臓が再生しますので、約3割くらいの大きさになったとしても、元の状態に戻ります。



このように、最大の臓器、肝臓には数々の働きがあり、消化に関るだけではなく、エネルギーの貯蔵や解毒など、様々な方向性で活躍しています。

普段は、「お酒を飲むと肝臓が悪くなる」とか、「C型肝炎で肝臓が悪くなった」という話しか聞くことがないので、「肝臓が一体何をしているのかが分からない」という方も多いかと思います。
今回の記事を、肝臓について知って頂くきっかけにして頂ければと思います。

※参考
第5回 1500gの巨大臓器・・・「肝臓」の役割 の記事で説明に使用した人体模型は以下です。
アルティメットEX・・・全身の内臓を等身大で再現した、最高峰の人体模型です。
膵臓、脾臓、十二指腸模型・・・膵臓を中心に、消化液の分泌経路を解説した人体模型です。
実物大 肝臓模型・・・肝臓を実物大で再現した模型です。

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