第11回 目の中はどうなっている? 眼球模型で見る、ものが見えるまでの仕組み
鏡で自分の目をのぞき込むと、黒い丸と、その周りの茶色い輪と、白い部分が見えます。
でも、鏡に映って見えているのは、眼球のほんの前の部分だけです。
眼球は、直径2.4センチほどの小さな球です。その中には、光を曲げるレンズ、眼球の中を満たす透明なゼリー、光を受け取る薄い膜など、カメラによく似た部品がぎっしり詰まっています。
今回は、眼球を6倍に拡大した模型を使って、「光が目に入ってから、見えるまで」を順番にご説明させて頂きます。

上の写真が、今回使う6倍拡大の眼球模型です。眼球部分の直径は約15センチ。実物ではまず見ることのできない目の中を、分解しながら観察できます。
眼球は3枚の膜でできている
眼球の壁は、外側から順に3枚の膜が重なってできています。
いちばん外側は、白くて丈夫な「強膜(きょうまく)」です。いわゆる白目の部分で、眼球の形を守る外壁の役目をしています。前のほうだけは透明になっていて、ここを「角膜(かくまく)」と呼びます。
真ん中の膜は、前から虹彩・毛様体・脈絡膜と続く「ぶどう膜」です。いちばん後ろの広い部分が「脈絡膜(みゃくらくまく)」で、血管がたくさん通っていて網膜の光を感じる細胞の側に栄養を届け、黒っぽい色素で目の中の余分な光を吸い取っています。
いちばん内側が「網膜(もうまく)」です。光を感じ取る細胞が並んでいる、厚さ0.1〜0.4ミリほど(場所によって違います)の薄い膜です。

上の写真では、外側の白い強膜、その内側の「3」の脈絡膜、さらに内側の「4」の網膜と、3枚の膜が重なっている様子を確認して頂けます。
光の通り道 角膜から網膜まで
光が目に入ると、次の順番で奥へ進んでいきます。
- 角膜:眼球のいちばん前にある透明な窓。光を大きく曲げる役目も持っています
- 房水:角膜と水晶体の間を満たしている透明な水
- 虹彩と瞳孔:茶色い輪が虹彩、その真ん中の黒い穴が瞳孔。入る光の量を調節します
- 水晶体:厚さを変えられるレンズ。ピントを合わせます
- 硝子体:眼球の中を満たす透明なゼリー
- 網膜:光を受け取るスクリーン
意外に思われるかもしれませんが、光を曲げる力がいちばん大きいのは水晶体ではなく、いちばん前の角膜です。水晶体はその後ろで、ピントを細かく合わせる役目を担っています。
虹彩と瞳孔は、カメラの絞り
黒目の中の黒い丸、「瞳孔(どうこう)」は、実は穴です。穴の奥が暗いので、黒く見えています。
その周りの茶色や青の輪が「虹彩(こうさい)」です。虹彩には小さな筋肉があり、瞳孔の大きさを変えることができます。
暗い場所では瞳孔が大きく開いて、たくさんの光を取り込みます。明るい場所では瞳孔が小さくなり、入る光を減らします。カメラの絞りと同じ働きです。
水晶体は、厚さを変えるレンズ
虹彩のすぐ後ろにあるのが「水晶体(すいしょうたい)」です。凸レンズの形をした透明な組織で、弾力があり、厚さを変えることができます。
水晶体の周りには「毛様体(もうようたい)」という輪があり、水晶体は「チン小帯」という細い糸で毛様体につながっています。
近くを見るときは、毛様体の中の毛様体筋が縮み、チン小帯がゆるみます。すると水晶体は自分の弾力で厚くなります。遠くを見るときはその反対で、水晶体は薄くなります。こうしてピントを合わせています。
年齢とともに水晶体は弾力を失い、厚さを変えにくくなります。近くの文字が読みづらくなる、いわゆる老眼は、主にこのためです。

模型では、水晶体、硝子体、虹彩をそれぞれ取り外すことができます。上の写真は全てのパーツを分解したところで、手前の左から、透明な硝子体、水晶体、虹彩が並んでいます。目の中がいくつもの部品の組み合わせでできていることがよく分かります。
硝子体は、眼球の中を満たすゼリー
水晶体の後ろから網膜までの広い空間を満たしているのが「硝子体(しょうしたい)」です。
硝子体は、透明なゼリー状の組織です。眼球の中の大部分を占めていて、その成分のほとんどは水です。
硝子体は光をそのまま通しながら、眼球の内側を満たして網膜を内側から支えています。ただし年齢とともに少しずつ液状になって縮み、やがて網膜から離れていきます。これは誰にでも起こる変化です。

上の写真は、模型の眼球の上半分を外したところです。透明な半球の部分が硝子体で、その前(写真の右下)に水晶体と虹彩が付いています。
目の前に糸くずや小さな影のようなものが浮いて見えることがあります。これは「飛蚊症(ひぶんしょう)」と呼ばれ、硝子体の中にできたにごりの影が網膜に映って見えているものです。
多くは心配のないものですが、網膜の病気の前ぶれのこともあります。はじめて気づいたときは、一度眼科で検査を受けてください。急に数が増えた、光が走るように見える、視界の一部がカーテンをかけたように欠ける、といった場合は網膜剥離の心配があるので、すぐに眼科を受診してください。
網膜は、光を受け取るスクリーン
水晶体を通った光は、硝子体の中を進み、いちばん奥の網膜に届きます。
網膜には、光を感じる「視細胞(しさいぼう)」がびっしり並んでいます。視細胞には2種類あり、暗いところで明るさを感じ取る「杆体(かんたい)」と、明るいところで色を見分ける「錐体(すいたい)」があります。
網膜で受け取った光の情報は、「視神経(ししんけい)」を通って脳へ送られます。
ちなみに、網膜に映る景色は、上下も左右も逆さまです。角膜と水晶体が凸レンズの働きをしていて、凸レンズで結ばれる像は上下左右が反対になるためです。私たちが景色を逆さまに感じないのは、脳がこの情報を正しい向きの景色として受け取っているからです。

上の写真は、硝子体を取り外して網膜を観察しているところです。網膜の上を走る赤と青の血管が、写真の上の端、視神経の付け根に向かって集まっている様子が分かります。
誰の目にもある「盲点」
網膜の中で、特に大切な場所が2つあります。
ひとつは「中心窩(ちゅうしんか)」です。網膜の中心にある「黄斑(おうはん)」の、さらに真ん中の小さなくぼみで、色を見分ける錐体がぎっしり集まっています。いま文字を読んでいるときに、いちばんはっきり見えているのが、この中心窩に映っている部分です。
もうひとつは「視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)」です。網膜の神経線維が束になって眼球の外へ出ていく出口で、網膜に栄養を運ぶ血管もここから出入りしています。先ほどの写真で、血管が集まっていた視神経の付け根にあたります。
この視神経乳頭には、光を感じる視細胞がありません。そのため、ここに映ったものは見えません。これが「盲点(もうてん)」です。
盲点は病気ではなく、誰の目にもあります。それでも普段気づかないのは、左右の目がお互いの見えない部分を補い合っていることと、脳が周りの景色で自然に埋め合わせていることによるものです。
盲点は、簡単に確かめることができます。
紙に、左に「+」、そこから右へ10センチほど離して、同じ高さに直径5ミリ〜1センチくらいの「●」を書きます。左目を手で隠し、右目で「+」だけを見つめたまま、紙を顔から30〜40センチくらいのところで、ゆっくり近づけたり遠ざけたりしてみてください。ある距離で、右側の「●」がふっと消えて見えなくなります。そのとき「●」が映っているのが、盲点です。左目で試すときは、左右を逆にしてください。
眼球を動かす6本の筋肉
眼球は、骨のくぼみ「眼窩(がんか)」に収まっています。そして眼球には、上下左右や斜めに動かすための筋肉が付いています。
眼球を動かす筋肉は6本あります。上下左右に引っ張る4本の「直筋(ちょくきん)」と、ななめに引っ張る2本の「斜筋(しゃきん)」です。片目に6本ずつ、両目で12本の筋肉が、脳からの指令で息を合わせて動くことで、左右の目が同じものを見つめることができます。

上の写真は、眼球と、眼球の周りの筋肉を3倍に拡大した別の模型です。眼球の上に付いている上直筋や、左側の外側直筋を確認して頂けます。内側直筋や下直筋、下斜筋も再現されていますが、この写真では眼球の陰になっています。
なお、眼球の上をまっすぐ走っている筋肉のひとつは、まぶたを持ち上げる「上眼瞼挙筋(じょうがんけんきょきん)」です。これは眼球を動かす6本とは別の、まぶたの筋肉です。
第11回で用いた人体模型は
今回の写真は、主に「6倍拡大 目(眼球)模型」を使っています。水晶体、硝子体、虹彩を取り外すことができ、眼球を2つに分けて、網膜の血管や神経の走り方まで観察できるモデルです。
眼球の周りの筋肉まで学びたい場合は、「眼球眼窩3倍拡大モデル」がございます。
当センターの眼球模型をお使い頂いているお客様からは、次のようなお声を頂いています。
「レーシックの手術の際に、目の構造を説明するのに使用しています。実物を見ながら説明ができますので、分かりやすく手術の内容を説明することができます。」(眼科医)
「糖尿病の患者さんに、網膜合併症を分かりやすく伝えるのに使用しています。眼底の写真と合わせて用いると、効果的に病気の解説ができます。」(内科医)
動画で見る 眼球の中の構造
ここまでご説明した内容を、実際の人体模型の動画でご覧いただけます。
※動画は1分22秒です。再生の際は音が出ますのでご注意ください。
目の構造をご自身の目で確かめたい方、患者さんやご家族・学生さんへのご説明にお使いになりたい方は、こちらから模型をご覧いただけます。
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