本物の肺はどんな形?実物大の肺模型で見る大きさ・色・呼吸のしくみ

人間の体の不思議

第2回 本物の肺はどんな形?・・・実物大の肺模型で見る、大きさ・色・呼吸のしくみ

肺は、胸の中の大部分をしめている臓器です。

「深呼吸をすると肺がふくらむ」「タバコを吸うと肺が黒くなる」など、名前を聞く機会は多い臓器です。一方で、本物の肺がどんな形で、胸のどこに、どのくらいの大きさで入っているのかを、写真や模型で確かめる機会は、あまりありません。

第1回では、肺とつながっている心臓についてご紹介させて頂きました。今回の第2回では、実物大の肺模型と、肺の組織を拡大した模型の写真を使って、

・胸の中での位置と、心臓との位置関係
・右と左で形がちがう理由
・本物の肺の色と、やわらかさ
・空気の通り道(気管・気管支)と、血液の通り道(肺動脈・肺静脈)
・酸素と二酸化炭素を入れかえる「肺胞」
・肺は自分ではふくらめない・・・横隔膜のはたらき

を順にご紹介させて頂きます。

肺は、心臓を左右からはさんでいる

実物大の精密肺模型|左右の肺のあいだに心臓があり、上に気管と喉頭が続く胸部の模型

実物大の精密肺模型。左右に広がる大きな臓器が肺、そのあいだの下の方に心臓があります。

上の写真は、胸の中の臓器を実物大で再現した模型です。左右に大きく広がっているのが肺、そのあいだの下の方にあるのが心臓です。上には、空気の通り道である気管と、声を出す喉頭が続いています。

肺は、胸の左右に1つずつあり、まわりを肋骨に囲まれています。上は鎖骨の少し上あたりまで、下は横隔膜という筋肉の膜の上まで広がっています。

心臓は、左右の肺にはさまれるようにして、胸の中央よりやや左寄りに入っています。肺と心臓はすぐ隣どうしにあり、太い血管でつながっています。

右の肺は3つ、左の肺は2つに分かれている

肺は、右と左で形が少しちがいます。

右の肺は、深い切れこみで「上葉(じょうよう)」「中葉(ちゅうよう)」「下葉(かよう)」の3つに分かれています。左の肺は「上葉」と「下葉」の2つです。

左の肺の前側には、心臓が収まるくぼみ(心切痕)があります。心臓が左寄りにあるぶん、左の肺は右の肺より小さくなっています。

また、右の肺の下には大きな肝臓があるため、右側の横隔膜は左側よりも少し高い位置にあります。そのため右の肺は、左の肺より上下の長さがやや短くなっています。一方で、左の肺は心臓が左寄りにあるぶん幅がせまく、右の肺のほうが幅の広い形をしています。

大人の肺の重さは、左右合わせておよそ1,000グラム前後とされ、右の肺のほうが少し重くなっています(体格や文献によって幅があります)。胸の中で大きな場所をしめていますが、中は空気でいっぱいなので、大きさのわりに軽い臓器です。

本物の肺の色は、ピンク色から少しずつ黒っぽく

生まれたばかりの赤ちゃんや子どもの肺は、きれいなピンク色をしています。

大人になるにつれて、吸いこんだ空気にまじるほこりやすすが、肺の中に少しずつたまっていきます。そのため大人の肺は、ピンク色のところどころに、灰色や黒っぽい点やまだら模様がまじった色になります。タバコを吸う人や、ほこりの多い環境で長く過ごした人ほど、黒っぽさが目立つ傾向があります。

本物の肺は、スポンジのようにやわらかく、たくさんの空気をふくんでいます。

写真1の模型の肺には、表面にこまかい網目のような線が描かれています。これは、肺の小さな区切り(肺小葉)の境目を表したものです。本物の肺でも、表面にうっすらと見ることができます。

空気の通り道・・・気管から肺胞まで、およそ23回枝分かれする

前半分を外した実物大の肺模型|気管と気管支の枝分かれ、肺の下の横隔膜

左右の肺の前半分を外したところ。中央の水色の管が気管と気管支、いちばん下の赤い筋肉の膜が横隔膜です。

上の写真は、左右の肺の前半分を外して、中が見えるようにしたところです。

鼻や口から吸いこんだ空気は、のどを通って気管に入ります。気管は胸の中で左右の「気管支」に分かれ、それぞれの肺に入っていきます。

肺の中に入った気管支は、木の枝のように何度も枝分かれをくり返しながら、だんだん細くなっていきます。空気の通り道は、気管から細気管支などを経て肺胞に至るまで、平均でおよそ23回枝分かれするとされています。

いちばん先には、ぶどうの房のような小さな袋が集まっています。これが、後ほどご紹介する「肺胞(はいほう)」です。

写真の肺の切り口に、小さな丸い穴がたくさん見えるのは、細く枝分かれした気管支や血管の切り口を表したものです。

肺の入り口・・・心臓から来た血液が、酸素を受け取って戻る

肺の入り口(肺門)の拡大|水色の気管支と、青い肺動脈・赤い肺静脈が出入りする実物大の肺模型

肺の入り口の拡大。水色の気管支と、青い肺動脈・赤い肺静脈が出入りしています。

肺の内側には、気管支と血管がまとめて出入りする「肺門(はいもん)」という入り口があります。

この模型では、水色の管が気管支、青い血管が「肺動脈」、赤い血管が「肺静脈」として色分けされています。心臓から肺へ向かう血管が肺動脈、肺から心臓へ戻る血管が肺静脈です。

ここで少しややこしいのが、名前と中身の関係です。体のほかの場所では「動脈には酸素の多い血液が流れる」ことが多いのですが、肺動脈には酸素の少ない血液が、肺静脈には酸素の多い血液が流れています。

「動脈」「静脈」という名前は、血液の中身ではなく、心臓から出ていく血管か、心臓へ戻ってくる血管かで決まっているためです。この模型は、血管を流れる血液の酸素の量で色を塗り分けているため、肺動脈が青、肺静脈が赤になっています。

肺胞・・・酸素と二酸化炭素を入れかえる小さな袋

肺組織拡大模型|気管支の先に肺胞が集まった肺小葉(右)と、肺胞の壁を拡大した部分(左)

肺の組織を拡大した模型。右が気管支の先に肺胞が集まった部分、左が肺胞の壁をさらに拡大した部分です。

気管支のいちばん先にある小さな袋が「肺胞」です。1つの大きさは直径0.2ミリほどで、目では見えないほど小さな袋です。

大人の肺には、左右合わせて数億個の肺胞があるとされています(平均でおよそ5億個とする報告もありますが、体格や調べ方によって幅があります)。すべて広げると、およそ60〜100平方メートル(文献によって幅があります)。学校の教室(約60平方メートル)1つ分か、それ以上の広さになります。

肺胞の壁の拡大模型|肺胞のまわりを網の目のように取り囲む毛細血管

肺胞の壁をさらに拡大したところ。肺胞のまわりを、細い血管が網の目のように取り囲んでいます。

肺胞のまわりは、毛細血管という細い血管が、網の目のように取り囲んでいます。肺胞の壁と毛細血管の壁はどちらもとても薄く、ここで、

と移ります。これが「ガス交換」です。肺胞に移った二酸化炭素は、息をはくときに体の外へ出ていきます。

小さな袋をたくさん並べることで、限られた胸の中に、とても広い「入れかえの場所」を作っているのです。

肺は、自分ではふくらめない・・・横隔膜のはたらき

お腹側から見た横隔膜|全身の内臓模型で腹部の内臓を外し、下から見上げた胸とお腹の境目の筋肉

お腹の内臓(胃・腸・肝臓など)を外して、下から見上げたところ。上に広がる筋肉の膜が横隔膜です。

肺には、自分でふくらんだり縮んだりするための筋肉がありません。では、どうやって空気を吸いこんでいるのでしょうか。

その答えが、上の写真の「横隔膜(おうかくまく)」です。横隔膜は、胸とお腹のさかいめにある、ドーム(丸屋根)のような形をした筋肉の膜です。写真2でも、肺のすぐ下に見えています。

つまり肺は、ポンプのように自分で動いているのではなく、まわりの筋肉の動きに合わせて、ふくらんだり縮んだりしているのです。

ちなみに、焼肉の「ハラミ」は、牛の横隔膜です。

写真や模型を見るときは、この順番で

肺の模型を見るときは、次の順番で見ていくと、構造がつかみやすくなります。

このように肺は、空気の通り道と血液の通り道が、肺胞という小さな袋で出会う臓器です。

心臓の形やしくみについては、第1回と第7回の記事をご参照下さい。

※本連載は、教材・展示のための解説です。症状や治療に関することは、必ず医療機関にご相談ください。

第2回 本物の肺はどんな形?で用いた人体模型は・・・

最後に、肺はどんな感じで膨らむのか
以下の映像を通して見て頂くことができます。肺という臓器を体感して頂ければ幸いです。

動画で見る 肺と呼吸のしくみ

呼吸のしくみを、実物大の肺模型で見てみましょう。
※動画は2分24秒です。再生の際は音が出ますのでご注意ください。

※こちらは心臓・気管・食道を含む胸部模型の動画です。肺単体の模型とは仕様が異なります。

構造をご自身の目で確かめたい方、患者さんやご家族・学生さんへの説明にお使いになりたい方は、こちらから模型をご覧いただけます。

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