本物の肝臓はどんな形?実物大の肝臓模型で見る大きさ・色・働き

人間の体の不思議

第5回 本物の肝臓はどんな形?・・・実物大の肝臓模型で見る、大きさ・色・働き

肝臓は、お腹の中にある臓器のなかで、いちばん大きな臓器です。

「お酒を飲むと肝臓が疲れる」「健康診断で肝臓の数値が高かった」など、名前を聞く機会は多い臓器です。一方で、本物の肝臓がどんな形で、どのくらいの大きさで、体のどこに入っているのかを、写真や模型で確かめる機会は、あまりありません。

第4回では、食べたものを分解する胃についてご紹介させて頂きました。今回の第5回では、胃のすぐ隣にある肝臓について、実物大の肝臓模型の写真を使って、

・体の中での位置
・大きさと重さ
・本物の色と手ざわり
・表と裏の形
・肝臓に出入りする血管と、胆汁の通り道
・肝臓の働きと、「沈黙の臓器」と呼ばれる理由

を順にご紹介させて頂きます。

肝臓は、お腹の右上にある

全身内臓模型で見る肝臓の位置|お腹の右上、胃の上にかぶさる赤褐色の臓器

全身の内臓模型の腹部。上の赤褐色の大きな臓器が肝臓、その下の白っぽい臓器が胃です。

上の写真は、全身の内臓模型のお腹の部分です。いちばん上にある、赤褐色の大きな臓器が肝臓です。

肝臓は、横隔膜のすぐ下、お腹の右上にあります。体の右側に大きく広がり、左側へ向かって薄く細くなりながら、みぞおちを越えて、左の肋骨の下あたりまで伸びています。

肝臓の大部分は、右側の肋骨の内側に隠れています。肋骨が、大きな肝臓を外からの衝撃から守る形になっています。

また、肝臓は横隔膜のすぐ下にあるため、息を吸って横隔膜が下がると、肝臓も少し下に動きます。

重さは1,000〜1,500グラム、お腹の中で最大の臓器

成人の肝臓の重さは、およそ1,000〜1,500グラムです。男性でおよそ1,200〜1,500グラム、女性でおよそ1,000〜1,300グラムほどとされています。

ただし、これらは目安で、体格によって幅があります。文献によって示される数値も少しずつ違います。

体重のおよそ50分の1にあたる重さで、お腹の中の臓器(内臓)のなかでは最も大きく、最も重い臓器です。

大きさは、左右の幅がおよそ20〜25センチ。上の写真のように、お腹の上のほうを横切るように、大きく広がっています。

本物の肝臓の色は、赤褐色

正面から見た実物大の肝臓模型|大きな右葉と小さな左葉

実物大の肝臓模型を正面から見たところ。大きい部分が右葉、小さい部分が左葉です。表面の白い線は、後ほどご説明する、肝臓の中の区分の境目を示しています。

生きている人の肝臓は、暗い赤褐色をしています。レバーの色を思い浮かべて頂くと近いかと思います。

肝臓がこのような色をしているのは、臓器の中を大量の血液が流れているためです。肝臓には、心臓から送り出される血液のおよそ4分の1が流れ込んでいます。

表面は薄い膜に包まれていて、なめらかで、つやがあります。中身はやわらかく、強い衝撃を受けると傷つきやすい臓器です。

模型は、本物の肝臓に近い赤褐色で作られています。

右葉と左葉・・・肝臓の表の形

肝臓を正面から見ると、大きく右葉(うよう)と左葉(さよう)の2つに分かれて見えます。

右葉のほうがずっと大きく、左葉は小さく薄くなっています。そのため、肝臓の多くは体の右側にあります。

右葉と左葉の境目には、肝臓を横隔膜とお腹の前の壁につなぎとめている、薄い膜(肝鎌状間膜:かんかまじょうかんまく)が付いています。

上の面は、横隔膜の丸みに沿って、ドームのようになめらかにふくらんでいます。

上から見た実物大の肝臓模型|横隔膜に沿った丸い上面と下大静脈

上から見た肝臓模型。青い太い管が、肝臓の後ろ側を通る下大静脈です。

裏返すと、胆嚢と血管の出入り口が見える

裏から見た実物大の肝臓模型|緑色の胆嚢と肝門部の血管・胆管

肝臓模型を裏側(下の面)から見たところ。緑色の袋が胆嚢、青い管が下大静脈です。

肝臓を裏返して、下の面を見ると、表側とはまったく違う景色が見えてきます。

まず目に入るのが、緑色の袋、胆嚢(たんのう)です。胆嚢は肝臓の下の面にぴったりと付いている、なすのような形の袋です。

そして、下の面の中央あたりには、血管や管が出入りする「肝門(かんもん)」という入り口があります。ここから、次の3本が肝臓に出入りしています。

また、裏側から見ると、右葉と左葉の間に、小さな2つのふくらみが見えます。「方形葉(ほうけいよう)」と「尾状葉(びじょうよう)」です。表側からはほとんど見えない部分です。

肝臓の後ろ側には、全身から心臓に血液を戻す太い静脈、下大静脈(かだいじょうみゃく)が通っています。肝臓の中を流れた血液は、肝静脈を通って、この下大静脈に注ぎます。

肝臓に入る血液の多くは、腸から来る

肝臓の大きな特徴は、2本の血管から血液を受け取っていることです。

ふつうの臓器は、動脈から酸素を含んだ血液を受け取っています。肝臓も肝動脈から血液を受け取っていますが、肝臓に流れ込む血液のおよそ7〜8割は、門脈から来ています。

門脈は、胃・小腸・大腸・膵臓・脾臓などから集まってきた血液を運ぶ血管です。つまり、糖やアミノ酸など、腸で吸収された栄養分の多くは、全身に回る前に、まず肝臓に運び込まれるのです(脂肪の多くは、リンパ管を通る別の道すじで運ばれます)。

肝臓は、この「入り口」の位置で、栄養分を蓄えたり作り替えたり、体にとって有害なものを処理したりしています。

肝臓の主な働き

肝臓は、非常に多くの働きを受け持っています。ここでは、代表的なものを4つご紹介させて頂きます。

胆汁は、胆嚢ではなく肝臓で作られる

裏側から見た膵臓・十二指腸の模型|肝臓から胆汁を運ぶ緑色の総胆管

膵臓・十二指腸の模型を裏側から見たところ。緑色の管が、肝臓から胆汁を運ぶ総胆管で、膵臓の後ろを通って十二指腸へ向かいます。

胆汁は、名前に「胆」の字が付いていることから、胆嚢で作られるものと思いそうになります。

しかし、胆汁を作っているのは肝臓です。肝臓は1日におよそ600〜1,000ミリリットルの胆汁を作っています。

胆嚢の役割は、肝臓で作られた胆汁をためておき、濃くすることです。食事をとって、脂肪を含む食べ物が十二指腸に届くと、胆嚢が縮んで、濃くなった胆汁を送り出します。

胆汁は胆管を通り、十二指腸に流れ込みます。上の写真の緑色の管がこの胆管(総胆管)で、膵臓の後ろを通り、多くの人では膵臓から来る膵液の管(膵管)と合流して、十二指腸の壁の出口(十二指腸乳頭)に開いています。

十二指腸に流れ込んだ胆汁は、脂肪を細かい粒にして、消化酵素が働きやすいようにします。

肝臓は8つの部分(亜区域)に分けられる

肝臓の模型の表面に描かれている白い線は、肝臓を血管の枝分かれにもとづいて分けたときの境目です。

肝臓の中では、門脈・肝動脈・胆管が枝分かれしながら広がっていて、その枝分かれのしかたをもとに、肝臓は8つの部分(亜区域:S1〜S8)に分けられています。

血管の枝分かれで見たときの肝臓の「右と左」の境目は、外から見た右葉・左葉の境目(肝鎌状間膜)ではなく、胆嚢と下大静脈を結ぶ線のあたりにあります。手術で肝臓の一部を切り取るときなどは、こうした血管の枝分かれを目安にして、切り取る範囲が決められています。

切り取っても、再び大きくなる臓器

肝臓には、他の臓器にはあまり見られない、大きな特徴があります。

それは、一部を切り取っても、残った部分が大きくなって、元に近い大きさまで回復するという点です。

健康な肝臓であれば、かなり大きな範囲を切り取っても、残った肝臓が数か月ほどかけて大きくなり、働きも回復していきます。元に戻るのは大きさ(体積)と働きで、形まで元どおりになるわけではありません。

家族などから肝臓の一部を提供してもらう「生体肝移植」ができるのも、この性質があるためです。提供した人の肝臓も、移植された肝臓も、それぞれ大きくなっていきます。

ただし、どこまで切り取れるか、どこまで回復するかは、もともとの肝臓の状態によって大きく変わります。

「沈黙の臓器」と呼ばれる理由

肝臓は、「沈黙の臓器」と呼ばれることがあります。

肝臓には予備の力が大きく、一部が傷ついても、残りの部分が働きを補います。また、肝臓の内部には痛みを感じる神経がほとんどありません(表面の膜が急に引き伸ばされると痛むことはあります)。

そのため、肝臓に障害が起きていても、かなり進むまで、はっきりした症状が出にくいのです。

健康診断の血液検査で肝臓の数値が調べられているのは、こうした自覚症状の出にくさを補うためでもあります。

写真や模型を見るときは、この順番で

肝臓の写真や模型を初めてご覧になるときは、次の順番で見ていくと、全体の形が頭に入りやすくなります。

このように、肝臓は、お腹の右上で、栄養の貯蔵や作り替え、解毒、胆汁づくりなど、非常に多くの働きを受け持っている臓器です。

胃の働きについては、第4回の記事をご参照下さい。

※本連載は、教材・展示のための解説です。症状や治療に関することは、必ず医療機関にご相談ください。

第5回 本物の肝臓はどんな形?で用いた人体模型は・・・

動画で見る 肝臓の構造

肝臓のかたちを模型で見てみましょう。
※動画は40秒です。再生の際は音が出ますのでご注意ください。

構造をご自身の目で確かめたい方、患者さんやご家族・学生さんへの説明にお使いになりたい方は、こちらから模型をご覧いただけます。

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