第5話 レオナルド・ダ・ヴィンチと人体模型
2009年10月17日から2010年1月31日の期間においてレオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo Da Vinci)が描いた精巧な解剖学図や人体図のスケッチを基にして人体模型やロボットを製作するダ・ヴィンチ展「Anatomy to Robots(解剖からロボットまで)」が、オーストラリアで開催されました。
展示されたのは、ダ・ヴィンチのスケッチを基に制作された子宮内胎児、脳、骨格、女性の生殖器、手足、筋肉、腱、解剖した遺体、そして現代によみがえったロボットなどでした。
レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452年~1519年)は、万能の天才という異名で知られるイタリアのルネサンス期を代表する芸術家です。
絵画、彫刻、建築、土木、軍事、人体、その他の科学技術に通じており、広い分野に足跡を残しています。有名なのは、盛期ルネサンスを代表する作品『最後の晩餐』や『モナ・リザ』などです。また、レオナルドの多岐に渡る研究は、13,000ページに及ぶ手稿(ノート)に、芸術的な図と共に記録されていて、その中には飛行機についてのアイデアも含まれていました。
また解剖学に対する関心と造詣が深く、自分自身で人体解剖も行っており、多くの解剖図を遺しています。
それらは、現在の解剖学イラストと比較しても見劣りしないものでした。牛の心臓の解剖図においても当時では発見されていなかった三尖弁がしっかりと描かれています。
恐らく最初は、人物像のスケッチにおいて躍動的な筋肉を描く必要があることから、解剖学を学んだと思われます。しかし凝り性のダ・ヴィンチは、大胸筋などの筋肉だけでは飽き足らず、その興味は循環器系から脳へと興味が移っていったようです。またその頃になると動物解剖から始まって人体解剖まで行うようになっていました。
ダ・ヴィンチの描いた解剖図を基にすれば、2009年の展示会まで待たなくても、当時において、より精巧な人体模型が作れたはずであったと思います。それくらい彼の描いた解剖学図は詳細であり精巧であったのです。
・・・第6話「ヴェサリウスと人体模型」に続く

